
アルプス 2026 / DAY 3
雲の上の峠、ステルヴィオ
9月30日(水)
ボルツァーノ → メラーノ → ステルヴィオ峠 → ボルミオ → フォスカーニョ峠 → リヴィーニョ
この旅でいちばん楽しみにしていた日だ。ステルヴィオ峠。標高2,758m、イタリアで最も高いところを通る車道の峠で、東側に48、西側に40のヘアピンカーブが刻まれている。東のプラートから登り、西のボルミオへ下る。両側を走りきるのが今日の目標だった。
メラーノを抜けてプラートから峠道に入ると、カーブの一つひとつに番号の標識が立っている。48、47、46……。数字が小さくなるほど、空気が冷たくなっていく。


km 107ステルヴィオ峠 2,758m
午後1時40分、峠の頂上に着いた。ヨーロッパ中から集まったバイクが並び、売店の壁はステッカーで埋め尽くされている。ここで昼食にピザを食べてから、峠の脇の丘を歩いて登った。

丘の上に立つと、足もとから雲の海が広がっていた。登ってきた東側の谷は雲の下に沈み、その向こうに氷河をかぶった山々が並んでいる。風は冷たく、指先がかじかんだ。


反対側をのぞき込んで、息をのんだ。ボルミオへ下る西側の道が、山の斜面いっぱいに折り重なっている。写真でしか見たことのなかった景色が、目の前にあった。


下りは後輩が前を走った。トンネルとギャラリーをいくつも抜け、カーブを描くたびに彼のバイクが小さく見え隠れする。27,000kmを走ってきた背中を追いかけるのは、なんだか誇らしかった。
ボルミオからもうひとつ、フォスカーニョ峠(2,291m)を越える。峠の上には税関があり、その先は免税の町リヴィーニョだ。夕方の光の中、黄色いセンターラインがまっすぐ谷へ伸びていた。
km 150フォスカーニョ峠 2,291m

リヴィーニョに着いたのは夕方6時前。木造の建物が並ぶ、標高1,816mの山あいの町だ。ここが、ふたりで泊まる最後の夜になる。
